くちびるから散弾銃 岡崎京子

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岡崎京子のくちびるから散弾銃。TAKE IT EASYの次に読む。

くちびるから散弾銃というタイトル、そして「おしゃべり-それは無責任の甘美な美徳」というエピグラフの通り、始めから終わりまで、ミヤコ、ナツミ、サカエの3人組かしまし娘(23歳独身)のおしゃべりがぎっしり詰め込まれている。

この服かわいい〜! もうヤダ、働くの面倒くさい〜! 彼氏が〜結婚が〜、今年の夏は〜、クリスマスは〜、といった3人のよもやま話が80年代後半の雰囲気と言葉遣いの中で活写される(そしてそれだけがある)。

今の若者たちにとっては、一世代前の若者たちの姿や文化を垣間見る東方見聞録的な面白さがあるだろうし、その時代をリアルタイムに生きていた人々にとっては、若かりしあの頃の空気と記憶に浸れるだろう作品。

とまれ、こんなご託に目を通すよりも、このかしまし娘たちのくちびるから連射される明るい散弾を身体一杯に浴びまくればよい。

 (追記:あとがきが2つあるのだけれど、その1つによるとこの作品は、「大人になりたくなかった女のコたちにも年月の波はザンコクにもおしよせる」というのがテーマだそう。

確かに23歳あたりって、大人だけれどまだ思春期のなごりがあるみたいな年頃とは思う。4年制の大学卒ならまだ社会人1年目であるし。その意味では、作品のトーンは全然違うけれど、歳という意味では今日マチ子のもものききかじりの主人公ももと似ている。20代半ば、大人と思春期、現実と夢に引き裂かれた年頃がモチーフ。)