竜の学校は山の上 九井諒子

九井諒子の竜の学校は山の上。 はじめて読む九井諒子。 表題作を含む9つの短編が収録されている作品で、それらに共通するモチーフは人と人でないものとの交流。それはたとえば、魔王退治から帰還した勇者と幼馴染の村人であったり、奥さんがケンタウロスだっ…

いちご戦争 今日マチ子

今日マチ子のいちご戦争。 COCOONとぱらいその間のイラスト集。 センネン画報の戦争バージョン。 少女と叙情はそのままに、いちごやお菓子でくるまれた戦争のイラストが載る。 記録として。

誰も知らない 是枝裕和

是枝裕和の誰も知らない。 標題を、徹底的に、映像でもって描き切っている。 社会的に、法的に排除されている者たち(この映画の場合、育児放棄された子どもたち)の1つの世界を開示してくれる。 感想や解説を付すことなど、野暮で、今の私にはとてもできない。…

四月の永い夢 中川龍太郎

中川龍太郎の四月の永い夢。 主人公初美の喪失とその受容が、こじんまりとした邦画的な品の良さ、美しさでくるまれて描かれる。 あらすじは次のようなもの。3年前に初めての恋人を突然の(自)死によって喪った初美は、その喪失感のため就いていた教職も辞し、…

mina-mo-no-gram 今日マチ子 藤田貴大

今日マチ子と藤田貴大のmina-mo-no-gram。 青柳いづみの喪失、追憶、受容が描かれる。 青柳いづみは高校生から27歳までの間に数々の喪失を経験する。高校生のときに自殺で親友を失い、大学生のときに初めての恋人を失い、友人は徐々に変化し、自分の母親を失…

呪詛を吐きながら 今日マチ子

今日マチ子の呪詛を吐きながら。 雑誌文學界の2018年3月号の特集、岡崎京子は不滅であるに寄稿されたエッセイ。 今日マチ子は、自分の中で最大の岡崎作品はリバーズ・エッジとヘルタースケルターで、今まではリバーズ・エッジが一番好きだったが、最近それが…

カメラを止めるな! 上田慎一郎

上田慎一郎のカメラを止めるな! 前半にワンカットのゾンビ映画がエンドロールまで放映され、次いでネタバレ的に、その映画がどのように出来上がっていったのかということが、企画の持ち込みから、ハプニングとアドリブ満載のドタバタ撮影風景までコミカルに…

百人一首ノート 今日マチ子

今日マチ子の百人一首ノート。 タイトル通り、百人一首の一つひとつに今日マチ子がセンネン画報的な絵を描いた作品。 百人一首を通して読むのは初めてだったのだけれど、今日マチ子の絵があるおかげで親しみをもって読むことができる。 百人一首に詠まれてい…

東京ガールズブラボー 岡崎京子

岡崎京子の東京ガールズブラボー。くちびるから散弾銃の次に読む。 くちびるから散弾銃のサカエ、ナツミ、ミヤコの3人の高校時代のお話。あらすじ自体は単純で、80年代前半、東京に憧れる田舎娘サカエがひょんなことから上京し、憧れの東京を元気いっぱい(ち…

くちびるから散弾銃 岡崎京子

岡崎京子のくちびるから散弾銃。TAKE IT EASYの次に読む。 くちびるから散弾銃というタイトル、そして「おしゃべり-それは無責任の甘美な美徳」というエピグラフの通り、始めから終わりまで、ミヤコ、ナツミ、サカエの3人組かしまし娘(23歳独身)のおしゃべ…

万引き家族 是枝裕和

是枝裕和の万引き家族。 万引きを家計の足しにしている疑似家族の姿を描いた物語。 家族であるのではなく、家族になることを試みる人々(共同体)の姿を描いたものだと思った。彼らは血のつながりのある真正の家族ではないけれども、祖母、親子、夫婦、兄妹な…

TAKE IT EASY 岡崎京子

岡崎京子のTAKE IT EASY。End of the Worldの次に読む。 青春モノ。お気楽な浪人生の弥七が、実家のそば屋を継ぐ(決意をする)までの話。 1980年代後半という時代、空気感、その中を生きる(東京の)若者たちの姿が活写される。そこには、当然だけれど今とは違…

End of the World 岡崎京子

岡崎京子のEnd of the World。pinkの次に読む。 ・はじめに(2019.01.14.追記) 少なくない人が、岡崎京子のEnd of the Worldを検索してこの記事にアクセスしているようなので、各々の読者に対して軽いまえがきを。 まずこの作品を未読の人に対して。この記事…

pink 岡崎京子

岡崎京子のpink。リバーズ・エッジの次に読む。 軽やかなユミちゃんを巡る悲劇が描かれている。 ユミちゃんは、欲しいものはすぐに手に入れないと気がすまない。我慢や諦めなんて言葉は彼女の辞書に載っていない。ただのワガママ娘だと言ってしまえばそこま…

リバーズ・エッジ 岡崎京子

岡崎京子のリバーズ・エッジ。 衝撃的な作品。 すぐに感想は書けない。 記録として。

もものききかじり 今日マチ子

今日マチ子のもものききかじり。ぱらいその次に読む。 あとがきにある「まだ青春を生きているすべての人に幸あれ!」という言葉が、この作品の主題を端的に表していると思う。 主人公のももは26歳で、週に3日派遣で事務をしながら、残りの日は学生時代から続…

ぱらいそ 今日マチ子

今日マチ子のぱらいそ。COCOONの次に読む。本当はアノネ、を先に読むべきなのだけれど、入手できなかったので仕方がない。 戦争モノ。戦時下、教会の絵画教室ぱらいそに通う少女ユーカリには罪があった。窃盗。そして彼女はずっと食事をとらずにいる。初潮が…

COCOON 今日マチ子

今日マチ子の作品。センネン画報+10yearsの次に読む。 戦争モノ。看護隊として戦地に赴くことになった15、6歳の少女たちの姿が(そして少女から大人への移り変わりが)、蚕の繭(cocoon)のイメージに包まれて描かれる。 帯にある「繭(空想)がわたしを死(現実)…

プリンセスメゾン(1-5) 池辺葵

池辺葵の作品を初めて読む。主題、人物造形も魅力的だったけれど、何よりも間(科白の少なさ)に驚かされた。 主題は、ローンでのマンション購入を検討する(主に独身女性の)人間模様を描いたもので、個性的だけれど等身大でもある人々の生活の一面が垣間見れる…

月曜日の友達 阿部共実

「ちーちゃんはちょっと足りない」の次に読む。この2つの作品はとてもよく似ているけれど、違うところもあるように思った。 どちらの作品も地方の中学校が舞台になっていて、ちーちゃんとナツ、水谷と月野という主人公たちは周囲のクラスメイト(普通の人々)…

25時のバカンス 市川春子

一組の姉弟のバカンスをめぐるお話。 はじめは、あくまでも姉による弟の誕生日祝いという名ばかりのバカンスだったが、それが徐々に、正真正銘恋人たちのバカンスへと移り変わっていく。 その移り変わりの様子は甘酸っぱく、それはきっと姉の性格に由来する…

センネン画報+10years 今日マチ子

ぱらりぱらりと読む。 瑞々しい甘酸っぱさ。 透きとおるような青春模様。 うら若い男女、淡い色彩、日常の端々に託される各々の気分と思い。 ちょっとしたやりとりや所作、ささやかな瞬間の濃やかさが切り取られている作品集。 青葉市子を想起する。